short story

□梟の鳴く夜に
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梟の鳴き声が響く。
月は冷ややかに俺を見下ろしている。
俺は自動小銃を持ち直して、男の見張りに立っていた。

「なあ」

男が言った。
男はくすんだ長い黒髪と、奇妙な色の瞳を持っていた。
否、男の黒髪は元々美しかったのだが、数日閉じ込められていたために埃に汚れてくすんでしまったのだった。

「なあ、聞いているんだろう」

疲れた声で男は言う。
呼び声に応えても俺に利益がない事を知っていたし、空腹の体を動かすのは億劫だった。
故に俺は無言で鉄格子越しに見える月を睨みつけて微動だにしなかった。
梟の鳴き声が響く。

「なあ、ここを抜け出さないか」
 
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