short story
□囚われの自鳴琴
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少女は歌を唄っていました。
長い金色の髪に紺碧の瞳、陶器のように白く滑らかな肌を持った少女でした。
少女は歌を唄っていました。深い森の高い塔に閉じこめられて、それでもずっと歌を唄っていました。
まるで唄うことしか知らないかのように……。
ある時ある国の王子様がその森にやってきて少女の歌を聴きました。
「なんて綺麗な声だろう。一度会ってみたいな」
王子様は家来を使って森の中を全て探しました。
そしてとうとう少女のいる塔を見つけ出したのです。
けれどその塔には扉がなくおまけに天に届くかのように高くそびえ立ち、どんな梯子でも届きません。
唯一開いているのは少女の顔を出しているてっぺんの窓だけです。
それでも王子様は諦め切れませんでした。
「この塔からあの少女を救い出した者には褒美をやるぞ!」
王子様がそのおふれを出した途端、国のあちこちからあらゆる人間がやってきました。
誰も彼もが恐いもの知らずで意気揚々と塔に挑むのですが入ることすらかないません。