middle story

□魔女と男の子2
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 カーテンを急に開けられたときのような強烈な光が男の子を襲いました。

「ひろこさん……?今日は日曜日だよ?」

 手をばたばた振って光から身を守るための布団を探しますが、手に触れたのは柔らかい布団ではなく、冷たくて堅い、石でした。
 驚いて手を引き、恐る恐る目を開きます。
 そこは自分の部屋ではありませんでした。
パニックになりながら、昨日のことを思い出していきます。
 明るくなってもここはどこだか判りませんでした。
つまり、来たことのない場所なのでしょう。
 石の形は様々でした。
四角いのや丸いの、十字架のようなものまでありました。
そしてそれたちにはいずれも字のようなものと、数字が書かれていました。
 男の子はきょろきょろと辺りを見回して魔女の姿を探しました。
魔女は、拍子抜けするくらい簡単に見つかりました。
 魔女は両手一杯に果物を抱えていました。
それも、男の子が今までに一度も見たことのない、『よく分からない』という言葉が一番似合うような果物でした。

「朝飯だ。食え」
「ぼ、僕、朝ごはんは食べない主義なんだ」

 頭をふりふりそう言うと、
魔女は眉をカタカナのハの字に曲げて言いました。

「何だ、食わんのか?うまいのに……」

 本当に残念そうでした。
きっと魔女はいつもこれを食べているのでしょう。
 魔女というものはとても恐ろしいなと、男の子は切実に思いました。
けれどおなかは空いています。
しかしよく考えてみれば、それも当然でした。
なぜなら、男の子は昨日の夜、何も食べていなかったのですから。
 ここでおなかが鳴ってしまえばあの『よく分からない』果物を食べさせられるに違いありません。
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