middle story

□魔女と男の子3
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 太陽が真上に上がりきった時と沈んだ時に男の子は魔女からあの果物をもらいました。
魔女は食べずにどこかへ消えたり男の子を眺めたりしていました。

「魔女……お母さん、見つかるかな」

 手をつないで並んで歩きながら、男の子は魔女に聞きました。

「ああ、見つかる。いや、見つけてみせる」

 魔女は力強く言いました。
男の子は、喜んでもいいはずなのに。
喜ぶべきはずなのに、なぜだかとてもとても寂しくなりました。
 夜が来ました。とても寒い夜でした。
冷たくて細い月が、天上から見下ろしています。
 それでも魔女は歩くのをやめません。
男の子の手を放すのをやめませんでした。
何かに取り憑かれたように、必死に、追い詰められたように歩きます。強く手を握ります。

「魔女、少し休みたい」

 男の子は言いました。
魔女は振り向きました。

「そう、だな……そろそろお前は疲れただろう」

 魔女はとても賢くてきれいなのに少々意地っ張りで子供っぽいところがあるようでした。
自分も疲れきっていると一目で分かるのに決して自分から休もう、とは言いません。
男の子は全然疲れていなかったのですが魔女が今にも倒れてしまいそうだったので頷きました。
 それはちょうど児童公園にさしかかったときのことでした。
 二人は公園の隅の方においてあるベンチに寄り添うように座りました。
そうしなければ、寒くて冷たかったのです。
だから手も握ったままでした。
 二人はずっと無言でした。
ただ風が木の枝を揺らす音だけを聞いていました。
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