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□BLESSING―死の女神―1
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 ある男がある町の寺院で目を覚ました。
 その場所は男の知らない場所で、そのベッドに寝ていたことは男の混乱を促した。
 自分は喧嘩をして、道に転がされていたはずだ。
 ふと衣擦れの音がし、身を固くする。
足音からして女。
男は、女に嫌な思い出があった。

「ひっ」

 ドアの代わりにつるされた布の間から姿を現した女。
その女の髪の色は、赤であった。
男は女にいやな思い出があった。
赤い髪をした女に。
 男は我知らず額から頬にかけて、罰点を描くように走る傷痕を隠すように手で覆う。

「目覚められたのですね」

 女はにっこりと微笑んだ。
淡いランプの灯を下から浴びた顔は不気味ではあったが、恐怖を催させるものではない。
男は女に悟られぬように安堵した。
 赤い髪をした女などよくいるではないか。
そのような女に一々びくつくなんて、馬鹿らしいにも程がある。
しかもよく見ればこの女はとびきりの美人だ。
髪の色だって、赤は赤でもあの女とは全く違う。
優しそうな赤だ。
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