middle story
□仮面舞踏会1
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青年の名前はカラスと言いました。
カラスは白い服を好んでいましたが、黒い猫を飼っていました。
飼っていると言うよりもその黒猫にカラスが飼われていたと言った方が正しいかもしれません。
カラスはそれ程その黒猫を溺愛していました。
黒猫のアリアはひどく気分屋で度々家出をしました。
その度にカラスは嘆き悲しんで街にアリアを捜しました。
でも何日かするとひょっこりとカラスの元に帰ってきてごはんを催促するのです。
カラスは毎回飛び上がって喜び、アリアの為にとっておきのごはんを用意しました。
「ああアリア、ようやく帰ってきてくれたんだね。
僕は君のいない間とても苦しかったんだ。
今回こそ帰ってこないかもしれないと思っただけで僕の胸は張り裂けそうだったよ」
その気持ちを知ってか知らずかアリアはカラスの膝に身体をすりつけてにゃあと鳴くのです。
カラスはそれだけでとっても幸せな気持ちになるのでした。
そんなある日、カラスはアリアに首輪を買いました。
アリアの眼にあわせて金の鎖にトパーズをつけた美しい首輪でした。
その首輪は黒いアリアにとてもよく似合っていたのでカラスはとても満足してアリアを撫でました。
「アリア、世界中の何処を捜したって君程この首輪が似合う猫なんていやしないよ」
けれどその次の日から、アリアはカラスの前から姿を消してしまいました。