ダルいズム。

□青い春
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 新緑が眼に眩しくて、
春太は思わず眼を細めた。
 木々の間から溢れる日差しは鮮やかで、爽やかで、
こんな日は無性に楽しくなってしまう。
 出来たら彼女でも呼び出して、
無意味に街でも散策しようか。
そう思って携帯を取りだした。
彼女を揃いの、
シルバーのストラップが
木漏れ日を反射させる。
 電話帳から捜すよりも
早く打てる様になった番号。
春太は素早くその番号を打ち込むと
携帯を耳に当てる。
呼び出し音が響き、息を潜める。
春太は電話で話すよりも
この時間の方が好きだった。
でるかな、いつでるかな。
気紛れの彼女は電話にでない事もしばしばだ。
けれど春太はいつもこの時間を楽しみながら
彼女の声が聞けるタイミングを待つ。
でるかな、いつでるかな。
 友人や知人から、
電話にでない時は
浮気しているんだよ、と言う声を聞く。
けれど春太は彼女の事を信用していたし、
少なくとも自分の目で見るまでは
彼女の事を信用したいと思っていた。
恐らくそれが、
恋人としての最低限の誠意だと思っている。
甘いと友人からは言われるが、
恥ずかしくて自分から手を繋ぐ事すら出来ない自分を
好きだと言ってくれる彼女が愛おしかった。
だから、多少くらい甘くてもいいと思っていた。
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