ダルいズム。

□Gohost Of A Rose
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 図書館から伸びる渡り廊下には、人があまりいなかった。
その廊下からは佐々岩の造った庭が見える。
和子はぼんやりとその庭を眺めていた。
入学した頃から、その場所は和子の特等席と言っても過言ではない。
 歌声が聞こえる。
外国の歌だった。
柔らかなテノールの声が深緑に響く。

“Promise me
When you see
A white rose you'll think of me.
I love so, never let go.
I will be-your ghost of a rose...”

「和子?」

 佐々岩が濃い緑の中から顔を覗かせた。
この人はこうやって暇な時はこの薔薇の世話をしている。

「いたんだったら、こっちにくればいいのに」

 五月の爽やかな風が吹き抜ける。
佐々岩の腕の中には
まだ蕾の白い薔薇が沢山摘まれていた。
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