ダルいズム。
□青い空の上に
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理央は空を見上げて考える。
この曇った空のうえには青空が広がり、またその空のうえにはまっくらな宇宙が広がっていると。
哲学者を気取るつもりはないから、それが何を意味しているだのとは語るつもりはないけれど、
なんだか悲しい気がした。
「どうした」
横からハスキーな声が入る。
「うん、この空の先はどうなっているのかなって」
理央が素直に答えると絵梨花は怪訝な顔をして理央の目をまっすぐに見つめた。
「らしくないな」
「はぁっ!?」
絵梨花の、正直と言えば正直な言葉に理央は声をあげた。
「人がせっかくひたってるのに、それはないんじゃないの」
絵梨花は目を曇った空に向けて溜め息をつく。
それだけだった。
しかし、何かを語るには十分すぎるモーション。
「絵梨花、やっぱり酷いわよ。
絵梨花には情緒とかってのが欠落してるに違いないわ」
元々きつい目をさらに悪い目つきで訴えてみるが、それすらも鼻でせせら笑う絵梨花。
「私がそうだと言うのなら、お前もそうに違いない」
反論につまり口をつぐむ理央を絵梨花は何の感情も宿らない目で眺めた。
「それにしても、何故そのような事を考え出したのだ。
普段からそのような事を考える人間でもあるまいに」
理央は溜め息をひとつつくと、また曇る空を見上げる。
今にも堤防が破壊されて雨が降りだしてきそうなそら。
「有重が言うのよ。
明けない夜はない、止まない雨はないと言うけれど、
同時に暮れない午はないし、崩れない天気もないって」