ダルいズム。

□梅雨と憂鬱
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 雨が降っている。
真っ黒な傘をさしながら、早く晴れないかと歩き続ける。
今朝は寝坊もしなかったし朝食だってしっかりと食べた。
なのに、気分が晴れないのは、きっとこの天気のせい。
 六月に入ったばかりなのに、もう梅雨の気配が強い。
全くもって嫌な事だ。
だからとは言え、雨が降らないのは問題であると知っているのだけれど。

「春太」

 名前を呼ばれて振り返ると、そこにいたのは小さな少年。
最近は何故だかブレザーの下にパーカーを着ている。

「おはよ」
「おはよう」

 欠伸混じりに答えると、有重はひどく傷付いた顔をして春太を見上げた。

「春太、欠伸するなんて酷いよ。
僕が挨拶してるって言うのに」

 答える気力もなかったので黙殺して歩を進める。
すると有重は気にした風もなく春太の傘の中に滑り込んできた。

「十%の降水確率に降られるなんて、ついてないよねぇ」

 ついていないと言いながら、そんなそぶりはどこにもない。
それどころかもう一度欠伸をした春太を見て、楽しそうに微笑む。

「昨日何時に寝た?」
「三時……」

 提出する課題が思いの外難しく、時間がかかってしまったのだった。
普段十二時前後に就寝する春太には少し厳しいものである。
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