ダルいズム。
□ジョアンの頭から
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僕は図書館で聖書を読んでいた。
それはいつもの事だし、なんら問題はないのだけれど。
「……盲いた者は幸いである」
茶色の髪がぱらぱらと視界を遮ってならない。
三ヶ月程の放置の末、僕の髪はのびにのびていた。
もともと軽い癖毛だった為にあらゆる方向に跳ねている。
「んー」
前髪をかきあげるけれど、手を外せばやはり髪は落ちてくる。
「んー……」
指にくるくると巻きつけて僕はため息をついた。
ああ、願わくはこの髪をどうにか出来ますように。
ここだけの話だけれど、僕は散髪が嫌いだ。
首のまわりに何かをぐるぐる巻きつけられて、しばらく拘束されるのが怖いのだ。
早い話が、僕には閉所恐怖症のきらいがある。
「んー」
「煩い」
誰かが僕の頭を本で叩いた。
そこにいたのはセクシーな僕の想い人。
最近は髪が落ちてくるからとカチューシャをしていた。
今日はえんじ色の太いカチューシャ。
僕があげた物だった。
「図書館では静かにするようにと言っただろう」
「うん、ごめんね」
「分かれば良い」
そう言って絵梨花は僕の隣に腰を下ろした。
めったにない事だから少し驚く。
ああ、願わくはこの心臓の音が君に聴こえま
すように。
どうせ「煩い」と言われてしまうのだろうけれど。