ダルいズム。
□裏切る展開
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同性の春太から見ても、有重は十分に愛らしい容姿をしている。
神秘的な輝きを瞳に浮かべ小悪魔のような笑みを浮かべられると、男と分かっていてもどきりとしてしまう。
声変わりを終えてもなお高さと清らかさを失わない声が聞こえれば、何を話しているのかと耳を澄ましてしまう。
有重とはつまり、そういう少年だった。
「有重は同性愛ってどう思う」
何気なく尋ねた時の、有重の驚いた表情を春太は忘れる事ができないでいた。
わすがに色付いた頬。
まっすぐにこちらを見つめる真紅の瞳。
「どうって?」
「そのままの意味。気持ち悪いとか思う?」
その瞳に落ちた陰で、有重の表情は随分と暗いものに思えた。
「……別に、ありだと思うよ。好きならしょうがないし」
ふうん、と。
春太は窓の外を見た。
有重の髪のように青い。彼は人工の青だけれど。
「春太は?」
「俺?」
「そう、春太はどう思ってるの」
机に顎をつける程の低さから、有重は言う。
くるりとした大きな眼が春太をとらえる。
「俺、は……」
ありだと思うよ。
ようやく言った言葉はそれだけだった。
ありだと思う。
それはすなわち真実だ。
誰かが誰かを好きになる事を否定する事などできはしない。