ダルいズム。

□手と声と
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 その姿を愛おしいと思ったのは、一体いつの事だったのか。

「どうかされましたか」
「なんでもない」

 振り返って問う君。
何でもないその仕草さえ全て、ふわりとなびく髪の一本さえ全て、俺は愛している。

「早く行きませんか。きっと先輩方は待っておられますよ」

 そうやねえ、と気の抜けた声を返すと君は不満そうに眉を寄せる。
 病気だ。
その数ミリの変化にさえ、俺は欲情してならない。
存在そのものこそが俺の媚薬。

「せっかくの飲み物がぬるくなります。急ぎましょう」
「やーん、行きとうなぁい」

 駄々をこねるように首を振ると君はより一層不満げに口角を下げた。
そしてずんずんと少しだけ腹立たしい足音でこちらにやってくる。
あ、さすがに怒られるかな。
そう思って首をすくめた。
 
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