middle story

□夢の通い路1
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 有木隊長は短い髪をかきあげながら笑った。
僕が不安そうにしているのがおかしかったらしい。
白い壁。
金属でもコンクリートでもなく、あえてたとえるならプラスチックのような。
見慣れない材質に囲まれ、着慣れない服を着、確かに僕はたまらなく不安だった。

「そう緊張しなくて大丈夫だって。軍隊よりずっと楽だよ、ここは」

 笑う有木隊長の指には、銀色の指輪がはまっている。
随分と古い形の指輪だった。
はあ、と生返事を返して足を進める。
確かに軍隊よりも楽だ。
今日やってきた僕を含めて、この第六分隊は五人しかいないらしい。
隊長はこの年若い有木隊長。
調査隊の制服をざっくりと着崩して、中からは支給ではないTシャツが覗いている。
靴紐も雑に通されているし、何から何まで軍隊では考えられない事ばかりだった。
 先週、突然所属していた隊からこの調査隊への移動を言い渡された。
僕が事態を理解する前に移動は完了していた。
完了した今でも事態は把握できていない。
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