ダルいズム。

□林檎の日
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 ごちそうさん。
小さな声にそちらを見ると、剥いておいた林檎が全て皿から消え失せていた。
食べた本人はもう我関せずと新聞に目を通している。

「ちょっと先生、勝手に食べないで下さいよゥ。俺のデザート……」
「男が女々しいもの食ってんじゃねぇ」
「でも先生は食べたじゃァないですかィ」

 左目が佐々岩を貫く。
片目だというのにこの眼力にはいつもひるんでしまう。

「俺はこれが飯」
「飯……って……」

 自分が持ってきたものだ、という訴えを飲み込む。
この理論は風祭に通用しない事は分かっている。
 剥いておいた林檎は一つ分だ。
母親から送られてきた蜜入りの林檎。
ダンボール一箱の林檎を一人で消費する事はさすがに不可能だと判断し、毎日一つずつ林檎を学校に持ってきて風祭や生徒と食べるつもりでいたのだ。
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