ダルいズム。

□好奇心は猫を殺す
2ページ/2ページ

 風祭は何も言わずに灰を落とした。

「なんか聞いた事あるな。お前んちの華々しい職業」
「大した事ないですよ」
「あるだろ。社長と?デザイナーと……」
「女優ですねぃ。もっぱら海外なんでこっちではほとんど見ませんけど」

 眩しい。
左目を細めて佐々岩を見る。
実際に眩しい訳ではないが、佐々岩の家系は間違いなく何か光のあたるものだ。
佐々岩自身も他とは違う何かがある。
 しかしそのような人間が高校で教鞭をとっていると胡散臭さが先に立つ。

「……お前……」

 なんでこの道を選んだんだ。
 言おうとして、やめた。
かわりに煙草をくわえる。

「はい?」
「香水もつけてんのか?くせぇ」
「ひどっ!!」

 この現状に満足しているのなら、余計な詮索はすべきではない。
煙を吐きながら空を見上げた。
曇り空に溶けていく。
 口にしないが、この薔薇とこのベンチは、結構気に入っている。
前へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ