ダルいズム。

□おでん
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 広くはない部屋だ。
男が三人集まると結構暑苦しい。
風祭はコートを脱ぐと空いている手を佐々岩に向けた。

「?なんですか?」
「上着。この部屋あんま掃除してないから埃つくぞ」

 かけておいてやる、という事だろうか。
おずおずとコートを渡すと洋服かけにかけてくれた。

「ジャケットは」
「あ、すみません」

 慌ててジャケットも脱ぐと同じく洋服かけにかける。
その代わりと言わんばかりにレジ袋を押し付けられた。
 中身はオレンジジュースや烏龍茶、そして酒類だった。

「……まだ飲むんですか……」

 オレンジジュースは良いとして、この家に溢れそうなほど酒があるのにまだ酒か。
メンバーを見たところ、これ以上成人が増える気配はない。
佐々岩自身は酒に強くないし、いくら風祭がワクだと言っても身体に悪いだろう。

「飲まないとガス欠になるんだよ」
「酔えないくせによく言いますよ……」
「酔うまで飲む」

 こたつにどっかと座り込むと乱雑にネクタイを緩めた。
春太に家を任せて学校帰りに酒を買いに行っていたようだ。
らしいと言うか何というか。
佐々岩はため息をついた。

「それで?有重は?どうせ来るんでしょう」
「あー、何か服着替えに帰るって」

 春太が食器を運びながら答える。
 春太は徒歩通学、佐々岩は自転車、風祭はバスで通勤している。
この三者は学校から直接来ているのに、電車通学の有重がわざわざ家に帰る必要はどこにあるのだろうか。

「あいつ普段から制服着てないだろ……」

 指定のシャツを着ていない有重は夏服だと私服にしか見えない。
今は冬服だが、分厚いコートとマフラーを着込んだ姿はやはり私服にしか見えない。

「この後遊びに行くんじゃないか?」
「教師として見過ごせないなぁ……」
 
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