short story

□砂
2ページ/5ページ

 男は少女の食事が終わるのを待つように、近くのパイプ椅子に腰掛けた。
少女からはだいぶ離れた位置にある。

「じゃあもらうけど……さみしいからあなたも来てよ」
「冗談じゃない」

 少女の言葉に男は忌ま忌ましそうに言った。

「近づいて、砂になるのはごめんだからな」

 その言葉に少女はやれやれと首をすくめると女の子に近づいた。
そして、女の子の柔らかそうな肌に触れる。
 ざらっ
 少女が女の子に触れた途端、
女の子は砂となり女の子の抜け殻だけが残った。

「少ないな」
「しょうがないでしょう。
しばらく食べてなかったんだし」
「まあな」

 少ない、と言うのは砂のことだった。
男は少しだけ少女に近づく。
しかしそれは女の子の抜け殻を回収するためだ。

「遊ばない?」

 少女がたずねる。

「ごめんだ」

 男が答えた。
 そして再び倉庫にはうっすらとした光だけが取り残された。
 少女は女の子が変化した砂を握り締め、恍惚とした表情を浮かべていた。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ