short story
□砂
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男は少女の食事が終わるのを待つように、近くのパイプ椅子に腰掛けた。
少女からはだいぶ離れた位置にある。
「じゃあもらうけど……さみしいからあなたも来てよ」
「冗談じゃない」
少女の言葉に男は忌ま忌ましそうに言った。
「近づいて、砂になるのはごめんだからな」
その言葉に少女はやれやれと首をすくめると女の子に近づいた。
そして、女の子の柔らかそうな肌に触れる。
ざらっ
少女が女の子に触れた途端、
女の子は砂となり女の子の抜け殻だけが残った。
「少ないな」
「しょうがないでしょう。
しばらく食べてなかったんだし」
「まあな」
少ない、と言うのは砂のことだった。
男は少しだけ少女に近づく。
しかしそれは女の子の抜け殻を回収するためだ。
「遊ばない?」
少女がたずねる。
「ごめんだ」
男が答えた。
そして再び倉庫にはうっすらとした光だけが取り残された。
少女は女の子が変化した砂を握り締め、恍惚とした表情を浮かべていた。