short story
□砂
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「ねえ、近くに来てよ」
少女は言う。
男は少女に言われるままに近づく。
目的は、二人の男の抜け殻を回収することだったが。
警官の服を回収している男の背中に少女は抱きついた。
肌が直接触れていないので砂になることはない。
「お前は、普通の食事ってできるのか?」
「吐いちゃうの」
男は少女に抱きつかれたまま、回収を終え、そこのドアに近づく。
「この砂は、命の残骸だな」
ぽつりと男が言う。
少女は素早く男の前に回り込み、布ごしに口づけた。
「これのおかげで、生きていられるんでしょう?」
男は体が弱く、長く生きられないと言われていた。
しかし今、こうやって立っていられるのも、彼女の食べ残した砂の命の為だった。
少女は男に砂の入った袋を手渡す。
「おやすみ」
「おやすみ」