short story

□死神列車
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 いつも通りの電車。
いつもと変わらない、退屈すら覚える帰宅風景。
 音楽プレイヤーからはいつも通り
気に入りのアーティストの気に入りの曲が流れてくる。
 何ら変わる事のない、日常の一部。
 煩い女子高生の声や男子学生の馬鹿のような話を聞き流し、
プレーヤーに入れられたアップテンポでありきたりなメロディーに耳を傾けるのにも、随分慣れた。
 ただ一つ違う事と言えば、窓の外を眺めながら考える噂話の真偽の内容。
 今日はよくある都市伝説というか怪談話の噂だった。
 怪談話の類は殆どと言っていいほど
ホラであるため真偽を確かめるために思考を巡らせる必要はない。
しかしなんとなくその数ある噂の中からその怪談話を選んだのは、
やはり怪談話の舞台に乗っているからだろう。
その怪談話の舞台は電車だった。
何の変哲もない、ただの電車。

 死神の譲った席に座った人間は、
三日以内に必ず、死ぬ。

 くだらない、よくある話だ。
自分自身を嗤いながら目を閉じようとして、
反対に目を見開く。
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