short story

□死神列車
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 彼女の身長は僕の鼻の高さで彼女との距離はまさしく目と鼻の先だった。
 電車にいるにも関わらず彼女は揺れていなかった。
か弱い存在感を通して無臭という彼女の香りが嗅ぎとれる。
 彼女がこちらを向いた。
 予想外の距離に驚く。
 それは予想外に近かったのか遠かったのか分からないが、とにかく予想外の距離だった。
 彼女の形の良い――言葉に直すならばアーモンド型の目が、
上三日月の形に歪められまた形の良い唇も下三日月の形に変形した。
 電車が止まる。
 背中にある背もたれにいつもより多くの体重をかけ、よろめく。
 風の抜けるような音もなくドアが開いた。
彼女はその間をするりとすり抜けた。
 髪も、ワンピースの裾も。靡く事はない。
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