short story

□名残雪
3ページ/6ページ

彼女の白い顔に白い雪がつもる。
冷やされて赤くなった頬が愛らしい。
橋の中頃に差し掛かったころ、彼女は突然立ち止まった。
真っ黒な手袋が外されていて真っ白なから伸びる桃色をした指先が黒のコートから姿を見せた。
意味もなく僕はどきりとして、反射的に立ち止まる。
彼女が雪の一欠片を目で追う。
そして、手を伸ばした。
彼女のてのひらがその雪に触れそうだと思った瞬間、
場違いにも冷たい風が彼女の指先から白をさらった。
何をしたのかは覚えていない。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ