short story
□待ち合わせ
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「あなたは、何をしている人?」
突然、少女が問いかけた。
「僕、は……特別に何かをしている訳じゃ、ありません。
世界の国を転々と巡る、ただのロクでもない旅人です」
「旅、人」
少女はその言葉を一句ずつ、
かみしめるように口にした。
「あの……
待ち合わせている人って、どんな人なんです?」
失礼かもしれないと思いつつも
場をつなげるために青年は問いかけた。
少女は静かに青年の顔を観察し、
そしてその問いに答えた。
「妹を……待っているの」
「妹さん?」
「ええ。
街で別れなければいけなくなったから、ここで待ち合わせることにしたのに」
少女は全てを語ることはせず、
ため息で語り終えた。
そこに、青年の興味をそそるものがあった。
「もしよければ……嫌じゃあなければ、
妹さんのこと、聞かせてもらえませんか?」
「あの娘の……事を?」
「嫌じゃ、なければ」
「……」
少女は何かにうかされたように公園をくまなく眺め、
そして待ち合わせの人物がいないことを確認すると、ふ、とため息をついた。
「そうね。まだ来そうじゃないものね」
チョーカーについた十字架を手袋をはめた手でいじりながら、少女は答える。