short story
□醜い娘
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街は男が今まで見てきたどの人間の街よりも美しく、そして人々も美しくありました。
夜中だというのに町中の人々は男の来訪を喜び、どうか自分の家に来るようにと誘いました。
男はその誘いの中で、この街で一番位の高い男の誘いを受けました。
その男には二人の娘がおり、その二人はとても美しくありました。
出される料理はみな素晴らしく、出される酒もまた美酒ばかりでした。
男はその家で一晩過ごし、そうしてまた一晩、また一晩と過ごしてゆきました。
そうする中で、男は何度も森に足を運びました。
娘に会う為です。
「お前はどうして街で皆と暮らさないのか」
と男が聞くと、娘は悲しそうに笑って
「私の様に醜い者は街へ入る事を禁じられているのです」
と言いました。
男はいずれ街の人々も、この娘の美しさに気がつくだろうと娘の酷い火傷の跡を眺めました。
その帰り、男は街の青年に呼び止められました。
「貴方はあの森に頻繁に出入りしている様だが、止めた方がいい」
男はその青年の泳ぐ目を見て、何かあるなと思いました。
「何故だ」
「あの森には魔女が住んでいるんだ」
「魔女?」
青年の話によると、森には醜いと言われ続けその事街の人々を恨み、
呪ったという魔女が住んでいると言う事でした。
また、その魔女は火あぶりにされた為に、酷い火傷の跡があるのだと聞きました。
男は合点がいった様に頷くと、
「いやはやなんとも恐ろしい魔女がいたものだな。
しかし私はそんな恐ろしい魔女になど会った事がない。
あの森にいるのは、清らかで美しいものだけだ」
と笑いました。