short story
□ある屋敷にて―人形師と姉妹―
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「お姉様、あそこにいるのは誰かしら」
ある時、妹は尋ねました。
姉が確認すると、なるほど確かに知らない人間が居るようでした。
それは二十をようやく過ぎた頃であろう若い男。
大きな荷物を携えて、姉妹の元へとやってきます。
「君達はここの家の人かい」
男は尋ねました。
妹がおずおずと恥ずかしそうに頷きました。
何故ならその男の声は姉妹が今まで聞いた事のないような甘い声だったのです。
「そうです。私たちはラング家の娘です」
姉が答えると男は楽しそうに頷きました。
「君たちは双子なんだね。
どちらがお姉さんなのかな」
「私です」
それから男と姉妹は自分達の名前や男が何故この場所にいるのかなどを話しました。
男の名前はアレンと言い、人形を作っているのだが最近ほとんど仕事がなくて困っているという事をしりました。
「じゃあ、アレンは私たちの人形を作ればいいわ」
妹は恥ずかしそうに言いました。
恥ずかしさのあまり声が出ず、姉が代わりに言葉を伝えたほどでした。