short story
□I'M GONNA LEAVE YOU
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一瞬、彼が何と言ったか理解出来なかった。
私は馬鹿のように彼の顔を見つめ、また馬鹿のように声を絞り出した。
「……え?」
彼は困ったように微笑んでマイクをカゴに戻す。
歌本をまとめながら私の顔を見つめた。
ちょっと困ったような、微笑み。
「別れよう」
あまりに突然で何を言っているのか分からなかった。
ただただ頭が混乱して、おもちゃのように首を振る。
「え、何……意味分かんないんだけど」
「言われると思った」
彼は軽く笑う。
「正直さ、何のためにお前といたいのか分かんないんだよね。
お前と俺は好きな食べ物も季節も歌も、何もかも違うんだから」
そしてまた彼は言った。
柔らかな微笑みを絶やすことなく。
「Baby, I'm gonna leave you.」