middle story

□魔女と男の子2
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 昨日と同じようにどんどん歩いて行きました。
太陽の位置もどんどん上がって行きます。
男の子は不思議と昨日より疲れていないことに気が付きました。
 昨日より暑くて昨日よりきちんと眠れていないはずなのに。
男の子は思いましたが疲れないのはいいことです。
そう思って放っておくことにしました。

「どこに行くの?」
「とりあえず、隣町からまわってみる」
「歩いて行くの?バス、出てるじゃないか」

 たかが隣町、されど隣町です。
徒歩で行くには時間と労力が必要でしょう。

「人間、お前金は持っているのか」

 魔女に言われて男の子は気が付きました。
バスなら時間も労力も要りません。
けれどバスで行くためには資金が必要なのです。
 男の子は家を出てくるとき、何も持って行きませんでした。
資金はありません。
 男の子は力無く頭も横に振りました。
魔女は勝ち誇ったような笑みで前を行きます。
 悔しさと不満で唇をとがらせながら男の子は魔女について行きます。
と言うよりもついて行かざるを得ませんでした。
なぜなら魔女は男の子の手をしっかりと握っていたのです。
 男の子は魔女の後ろで普通の街並みを眺めていました。
 一見普通に見える街並みに、この魔女がどれだけ浮いて見えることでしょう。
それに気づかず普通に通り過ぎて行く人達の、何と非現実なことでしょう。
 色と音と物にあふれた街の中で彼女は無音で無彩色の存在でした。
この場所にいて、ひどく滑稽でひどく不可思議でひどく美しいものでした。
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