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□紅姫2
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お姫様と蒼い風はすぐに仲良くなりました。
お姫様が鳥達に歌を聴かせていると、どこからともなく蒼い風が現れて
お姫様の歌声にあわせて踊りだすのです。
それは毎日の様に繰り返されました。
 そんなお姫様を不思議に思った侍女は

「姫様はいつも何とお話しされているのですか」

と聞きました。
するとお姫様はにっこりと笑って

「鳥と風とお話ししているのよ」

と答えます。
侍女はずっと閉じ込められていたお姫様は友達がいないのだからと不憫に思って頷きました。
 いつもの様に遊んでいたお姫様に蒼い風が聞きました。

「お姫様は名前を何というのです?」

お姫様は困ってしまいました。
お姫様には名前がなかったのです。
それを察した蒼い風は笑いました。

「ははあ、私と同じという事ですね。
名前のないお姫様を私は今まで見た事がなかったのですよ」

 そしてまた蒼い風は

「それでは私がお姫様に名前を差し上げましょう。
私と鳥達とお姫様の秘密の名前です」

と言ったのでお姫様は嬉しくなって

「本当に貴方が私に名前を付けてくださるの?」

と返しました。
蒼い風は笑いました。
あまりにお姫様が愛らしかったのです。

「ええ、ええ本当ですとも。
その真っ赤な翼に相応しい名前を差し上げましょう」

 蒼い風はしばらく首をひねって考えていました。
そしてようやくいつもの笑顔に戻って

「紅姫と言うのは如何でしょう。
紅というのは美しい赤色という意味です」

と言うものですからお姫様は嬉しさで胸がいっぱいになりました。

「ええ、勿論素晴らしいわ。
何て良い名前なのでしょう、私には勿体ない程だわ」

とうっとりして答えると、蒼い風はお姫様の髪を撫でて笑いました。
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