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□紅姫2
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 ある時蒼い風は真っ白な花をお姫様に摘んできました。
お姫様は喜びましたが蒼い風は悲しそうな顔をしていました。

「どうしたの?」

お姫様は聞きました。
蒼い風は困った様に笑って

「何でもありませんよ、紅姫」

と答えましたがお姫様は気になって仕方がありませんでした。
 夜になって侍女に

「その花はどうしたのですか?」

と聞かれたのでお姫様は

「鳥が運んでくれたのよ」

と嘘を付きました。
何故だか本当の事を言うのが憚られたからです。
 次の日も、その次の日も、蒼い風はお姫様に白い花をくれました。
けれど蒼い風の顔は晴れません。
十二回花をもらって、お姫様は蒼い風に問いつめました。

「貴方はどうしてそんなに浮かない顔をしているの?何かあるのでしょう?」

すると蒼い風は大変困った顔をして笑います。

「ああ紅姫。
何かあります、何かありますとも」

 とうとう蒼い風はお姫様に本当の事を話しだします。

「お姫様、私の可愛い紅姫。
貴女はこの国の為に殺されてしまうでしょう」

蒼い風はお姫様の手をしっかりと握りました。

「私は貴女を助けたい。
だからどうか少しの間、待っていてはくれませんか」

 お姫様は驚いて目を見開きます。

「それはどういう事なの?」
「この塔の根元には私が今貴女に渡した真っ白な蓮の池があります。
真っ赤な翼を持つ少女の身体をその池に沈めれば、どんな病気にも効く真っ赤な蓮が咲くのです。
金儲けに目がくらんだ大臣達は、誰にも知られていないお姫様を、この塔のてっぺんのこの部屋から突き落としてしまうでしょう」

 蒼い風はじっとお姫様の瞳を見つめて

「私は今から貴女が助かる様に貴女が空を飛べる様になる方法を捜してきます。
だからその間、待っていてはくれませんか」

と言いました。
お姫様は翼を持っていましたが空を飛ぼうと思った事は今の一度もなかったのです。
お姫様は瞳にいっぱい涙を浮かべて

「ええ、ええ、分かったわ。
待っているわ、私の愛しい蒼い風。
貴方が帰ってくるのをずっと待っているわ」

と頷きました。
 蒼い風はお姫様に一度だけ口付けると、そのままどこかへ消えてしまいました。
お姫様は悲しくて声がかれる程泣きました。
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