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□紅姫2
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 蒼い風が消えた次の日から大嵐がやってきました。
硬く鎧戸を閉め、木を打ち付けますがびゅうびゅう、ごうごうと風は化け物の様に塔を襲います。
お姫様は塔のてっぺんの部屋にいて白い花に囲まれながら、蒼い風がいつ帰ってきてもいい様にずっと待ち続けていました。
 七日経ってようやく嵐は過ぎました。
けれど蒼い風は帰ってきませんでした。
お姫様は塔のてっぺんの部屋にある窓を開けて、硬く閉まっていた鎧戸を押し開けました。
 鳥がお姫様に歌ってくれと催促します。
お姫様はそれに答えて歌い出しました。
早く蒼い風が帰ってくる様に祈って、歌い始めました。
 しかし嵐が収まってから十二回日が昇り、沈んでも蒼い風は帰ってきませんでした。
それでもお姫様は蒼い風が帰ってくる様に祈りながら、何度も歌を歌い続けました。
もしも蒼い風が道に迷ってしまっても、どこからか聞こえてくるこの歌声で蒼い風が帰ってこられる様に。
 とうとうお姫様は病気になって寝込んでしまいました。
声がかれて歌を歌う事も出来ません。
お姫様は泣きました。
これでは蒼い風が帰ってきても共に空を飛ぶ事はおろか、迎えに行く事も出来そうになかったからです。
 三日寝込んで、お姫様は声を聞きました。
その声は蒼い風の声に聞こえました。
お姫様は驚いて目を覚ましベッドから飛び起きました。
嘘の様に身体か軽く、これならば空も飛ぶ事が出来そうに思いました。
 お姫様は塔のてっぺんの部屋の窓を押し開けました。
青い空に朝日がきらきらと輝いてとても綺麗でした。

「蒼い風が来てくれたのだわ」

お姫様は呟くと窓から身を乗り出しました。
真っ赤な翼を出来る限り大きく開きました。
朝日の輝く空の遠くに、蒼い風が見えました。
それは靄か何かの様でお姫様は不思議に思いましたが

「蒼い風!帰って来てくれたのね!」

と叫んでその風に向かって手を伸ばしました。
するとお姫様はぐらりと身体を揺らして窓から落ちてしまいました。
お姫様の小さな翼は、お姫様の身体を支える事が出来ずに、どんどん落ちていきます。
目の前に真っ白な花の咲く池が見えました。
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