middle story

□紅姫2
5ページ/6ページ

 池にぶつかると思ったその時、不思議な事が起きました。
お姫様の身体は軽くなってふわふわと宙を漂っていたのです。
池には波紋がゆらゆらと揺れています。
 お姫様の身体はどんどん空へ上がってゆきます。
お姫様は

「不思議な事もあるものだわ」

と思っていましたが、塔のてっぺんに近づいた頃、池に走り寄る蒼い風の姿を見つけて声を上げました。

「やっぱり蒼い風が帰ってきたのね。
だから私は空が飛べる様になったのよ」

 お姫様は嬉しくなって蒼い風に叫びます。

「蒼い風、私は此処よ。
早く二人で行きましょう」

けれど蒼い風が気付く様子はありません。
お姫様は不思議に思いました。
お姫様の身体はまだ空に向かっていて、とうとう塔を追い越してしまったからです。
 蒼い風は泣いている様に見えました。
お姫様は

「蒼い風、私の愛しい蒼い風。
私はここにいるわ」

と叫びますが蒼い風に聞こえている様子はありません。
 そしてついにお姫様の身体は、空のてっぺんについてしまいました。
 お姫様が下を見下ろすと池に立ち尽くす蒼い風の姿が見えました。
 お姫様はあっと声を上げました。
池には真っ赤な蓮の花が咲いていたのです。
 それはまるで、お姫様の翼の色の様でした。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ