middle story
□紅姫2
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池にぶつかると思ったその時、不思議な事が起きました。
お姫様の身体は軽くなってふわふわと宙を漂っていたのです。
池には波紋がゆらゆらと揺れています。
お姫様の身体はどんどん空へ上がってゆきます。
お姫様は
「不思議な事もあるものだわ」
と思っていましたが、塔のてっぺんに近づいた頃、池に走り寄る蒼い風の姿を見つけて声を上げました。
「やっぱり蒼い風が帰ってきたのね。
だから私は空が飛べる様になったのよ」
お姫様は嬉しくなって蒼い風に叫びます。
「蒼い風、私は此処よ。
早く二人で行きましょう」
けれど蒼い風が気付く様子はありません。
お姫様は不思議に思いました。
お姫様の身体はまだ空に向かっていて、とうとう塔を追い越してしまったからです。
蒼い風は泣いている様に見えました。
お姫様は
「蒼い風、私の愛しい蒼い風。
私はここにいるわ」
と叫びますが蒼い風に聞こえている様子はありません。
そしてついにお姫様の身体は、空のてっぺんについてしまいました。
お姫様が下を見下ろすと池に立ち尽くす蒼い風の姿が見えました。
お姫様はあっと声を上げました。
池には真っ赤な蓮の花が咲いていたのです。
それはまるで、お姫様の翼の色の様でした。