middle story
□唄う森1
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少女の消えた森は、全て焼けてしまって丸裸になってしまいました。
けれどいつの間にか、少女がいつも歌を唄っていた場所から芽が生えてきました。
その芽はどんどん成長して、大きな樹になりました。
その樹は夜になると歌い出し、少女とそっくりな歌声が響き渡りました。
その国の人々は少女の幽霊が歌を唄っているのだと気味悪くなり、
その土地に住んでいた人々はその樹から逃げる様に遠くへ引っ越していきました。
するとその樹は白く美しい花を付け、桃色の可愛らしい実を付けました。
その香りは天上におわす神々の香水の様に良く、
その味は天上におわす神々の召し上がる食物の様に素晴らしく、
その実を食べた者はありとあらゆる病気が治り、
少女の様に美しい歌声を得ると言われました。
しかし樹の歌声に恐れをなした人々は、決してその樹に近づこうとしなかったので、
実は落ちて種は芽吹き、どんどん樹は成長していきました。
そうして、歌を唄う樹は大きな森を作りました。
夜になるとその樹木は歌い出し、美しい歌声を辺りに響かせました。
それからその森は、唄う森と呼ばれる様になりました。