middle story
□唄う森2
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男は友人の元へ向かいました。
友人は喉の病になってからふさぎ込み、家から出ようとしませんでした。
「食うが善い」
男は友人に果実を渡しました。
友人はいぶかしんだ眼で男を見ていましたが、男に促され、しぶしぶ果実を口に運びました。
友人の声は果実を食べた途端、元の声よりも美しくなりました。
「ああ、我が友よ」
友人は美しい声を感動に震わせながら言いました。
「お前は私の為に危険な唄う森から、果実を採ってきてくれたというのか」
男は首を振りました。
「いいや、唄う森は少しも危険などではなかった。
愛らしい少女がその果実をわけてくれたのだ」
そうして、男は友人の前から姿を消しました。