middle story

□唄う森2
2ページ/4ページ

 男は友人の元へ向かいました。
友人は喉の病になってからふさぎ込み、家から出ようとしませんでした。

「食うが善い」

 男は友人に果実を渡しました。
 友人はいぶかしんだ眼で男を見ていましたが、男に促され、しぶしぶ果実を口に運びました。
友人の声は果実を食べた途端、元の声よりも美しくなりました。

「ああ、我が友よ」

 友人は美しい声を感動に震わせながら言いました。

「お前は私の為に危険な唄う森から、果実を採ってきてくれたというのか」

 男は首を振りました。

「いいや、唄う森は少しも危険などではなかった。
愛らしい少女がその果実をわけてくれたのだ」

 そうして、男は友人の前から姿を消しました。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ