middle story

□ヘブンリー・ブルー
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 さて、彼女と僕のなれそめを話そう。
彼女と僕が初めに出会ったのは、初夏の頃だった。
新緑が美しく映え、彼女は白いワンピースを着て木の下に立っていた。
僕は友人と、友人の恋人でピクニックに行くという話だけを聞いていて、まさか女の子が来るとは思ってもいなかったのだ。

「麻生、澄?」

 彼女は首を傾げて問いかけた。
確かに麻生 澄というのは僕の名前で、しかし僕は彼女を見た事も聞いた事もなかったのだからひどく驚いた。
まさかそんなに美しい少女から僕の名前を聞くとは考えた事すらなかったのだ。
 僕と彼女は友人が来るまで一言も口を利かなかった。
ただ彼女が僕の名前を呼んで、僕が頷くのを確認すると自分を指さして夏野 雪美と名乗った。
会話と言えば、それだけ。
それが会話と呼べる物なのか、僕自身にも分からないけれど。
 しばらくすると友人がやってきた。
隣には友人の彼女もいる。
ショートカットの、ボーイッシュな雰囲気の女の子で、僕はサバサバした所に好印象を抱いていた。
友人は僕の肩を引き寄せると小さな声で僕に耳打ちする。

「どうだ、可愛いだろ?」
「一体あの娘は誰なんだ?」
「お前に紹介してやろうと思ってさ。
美佳に頼んだんだよ、お前とあいそうな可愛い女の子を紹介してくれって」

 美佳は雪美と楽しそうに会話をしていた。
楽しそうなのは美佳だけで、雪美は口の端に笑みを湛えてはいたが瞳の奧は笑っていなかった。
なるほど、僕にあいそうな娘だ。
僕は美佳の人選の良さに感心した。
 彼女はただぼんやりと遠くの空を見ていた。
僕もその隣に立って、青い空を見つめていた。
友人は美佳と楽しそうに会話をしていた。
そして、ピクニックは何事もなく終わった。
 僕と雪美は友人によって携帯電話の番号を交換させられ、そして分かれた。

「可愛いだろ?」

 そうだね。
僕は無意識に答えていた。
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