middle story

□ヘブンリー・ブルー
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 ピクニックが終わってから、一ヶ月程経ったある日の事だった。
僕の携帯電話がなりだした。
その日僕は特にする事もなく一日中微睡んでいたので、その時もうとうとと夢の世界を行ったり来たりしていたのだ。
普段僕の携帯電話が鳴る事はない。
せいぜい、実家か友人くらいの物だった。
しかしその日の電話はそのどちらでもなかった。
 雪美だった。

「もしもし」

 僕は電話に出ると、起きたばかりの掠れた声で応答を求めた。
 正直、雪美の事はすっかり頭の中から消え失せていたのでその電話は驚き以外の何者ももたらさなかった。
雪美は自分から連絡を取るような性質に見えなかったし、僕もそうだった。

「麻生、澄?」

 いつかのように雪美は問いかけた。
電話では頷いた所でわかるはずもないので僕はその問いに答える。

「そうだけど」
「今、家?」
「うん」

 少しだけ沈黙。
雪美はざわついた場所にいるようだった。
電話から、かすかに雑踏の音がする。

「夏祭り、来ない?」

 三度目の問いかけ。
僕は少しだけ悩んだ。
そしてすぐに理解する。
ああ、そうか。
恐らくこの電話も友人と美佳が共謀して雪美にかけさせたに違いない。
僕も雪美も何のアクションも起こさないのにやきもきして。
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