middle story
□仮面舞踏会1
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カラスは街を捜しました。
一日中捜しましたが結局アリアは見つかりませんでした。
ふらふらとカラスはその辺にあった公園に入りました。
その時どこからかにゃあと声がしました。
カラスは驚いてきょろきょろと辺りを見回しましたが、どこにも猫はいません。
がっかりしてベンチに座ると、またにゃあと声がしました。
仔猫でした。
ベンチの正面にあるコンクリートの遊具に隠れるようにして仔猫が一匹鳴いています。
元は真っ白で思わず頬ずりしたくなるようだったでしょうその毛皮は今や黒と赤の斑模様でした。
血がこびりつき、触るのもおぞましい程に変色していました。
その猫はカラスの姿をみると毛を逆立てて威嚇しました。
少しでも自分に近付けばひっかくか噛みつくかをするぞと言わんばかりに小さな身体で唸り、身構えていました。
見たところ大きな怪我はなさそうです。
その血はさしずめ喧嘩相手の返り血でしょうか。
カラスの両手で軽々と持ててしまいそうなその猫はなんとたくましいのでしょう。
そして不器用にも人間に媚びを売る事もできないのです。
カラスは少し悩んで立ち上がりました。
もしかすると明日にでもアリアが帰ってくるかもしれません。
それなのに家に新しい猫がいればアリアは今度こそ家を出ていってしまうでしょう。
だからカラスは仔猫を放って家に帰りました。
真っ赤な白猫はまたにゃあと鳴くと遊具の中でうずくまりました。