middle story

□仮面舞踏会1
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 次の日またカラスはアリアを捜しに街に出ていました。
朝からずっと捜して、昼頃にはお腹がぺこぺこになって倒れてしまいそうでした。
カラスは馴染みの店に入る事にしました。
 飴色のドアの前にダリアの花が何本も生えた店。
「OPEN」と書かれた黒板にもダリアが何本か飾られています。
その下には「月兎」と書かれていました。
 カラスは「月兎」に入ると少し深呼吸をしました。
深いコーヒーの香りがします。
 入るとすぐにカウンターがあります。
カウンターの手前には丸い瓶にキャンディと砂糖が沢山入っていました。
窓には綺麗な色硝子がはめられていて、柔らかな光りが床に物語を描いています。
空の兎が逃げたのを黒い女神様と白い女神様が追いかけている神話でした。
カラスはファンの回転する天井を眺めながらカウンターにつきました。
カウンターの奥にはドアと同じ飴色の食器棚。
コーヒー豆やカップが仲良く並んでいます。

「ダリア、いないのかい」

 カラスは店の奥の階段に向かって声を出しました。
けれど月兎の店主はカウンターの向こう側からひょっこり姿を現しました。

「いるわよ、ここに」
「そのようだね」
「ご注文は?」
「そうだな……。コーヒーと、いつもので」
「コーヒーも、いつものでしょう?」

 ダリアは笑いながらコーヒーの準備を始めました。
そしてパンをトースターの中に押し込めます。
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