middle story
□仮面舞踏会1
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コーヒーを待っていると、ふと下の方で猫の鳴き声を聞きました。
アリアの張りと艶のある声とはまるで違った、か細くかすれた声でした。
「君、猫なんて飼っていたの?」
「拾ったのよ。血まみれで道に倒れていたから」
カウンターをのぞき込むとそこには小さくて白い仔猫がいました。
カラスを認めると毛を逆立ててうなります。
「嫌われているのね」
ことん。ダリアはコーヒーをカウンターに置いて言いました。
カラスは苦笑してコーヒーを飲みます。
仔猫はダリアが動くとぴょこんとその脚の陰に隠れました。
その猫は昨日公園にいた猫のようです。
自分には殺気立った気配を向けるのに、ダリアには甘えたように喉を鳴らします。
その妙な扱いの違いにカラスは少しだけ肩をすくめました。
「ねえダリア」
「なあに」
ダリアはマッチをすってガスの元栓を緩めました。
ぼう、と小気味良い音を立てて円形に火がつきます。青い、ガス特有の火の色でした。
二つ火をつけ、ひとつにフライパンをのせるとバターを放り込みます。
もうひとつにはスープの入った小鍋を置きました。
いい香りが漂ってきたところでダリアは首だけこちらを向きました。
「もう、なに?」