ダルいズム。

□青い春
5ページ/6ページ

 
「春は、私の事好き?」
 唐突な問い。
「……好きだけど」
「だけど?」

 その問いは、えりあの浮気とどのような関係があるのだろうか。
春太には理解できなかった。

「春、いつもそうなんだよ。
怒らないで、私のワガママ聞いて、いつも笑って。
本当に好きか分からないじゃん」

 だって、えりあにはいつも笑っていて欲しかったから。
中学の頃から付き合っていた君に、その他自分がしてやれる事は何があったのかな。
 言葉としては出てこない。
心の中でぐるぐると渦を巻く感情。

「好きじゃないから
浮気しても怒らないんだよ」

 えりあの強い眼が春太を見上げる。
 この感情に富んだ瞳。
自分にはないように思えて、好きだった。

「春は優しすぎる」

 夜風に揺れる長い髪がとても綺麗だった。
この髪をいじるのが好きだったな。

「だから私にも
別れたいって言えないんでしょ」
「……え?」

 鈴を転がした様な愛らしい声。
この声を聞いているのが好きだった。
良かった事嫌な事面白かった事。
目を閉じて聞いているだけで落ち着いた。
度々聞いているのかと怒られたけれども。
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ