ダルいズム。
□僕のいくところ、君のいるところ。
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ぱたぱたと足音が聞こえる。
転校してきた学校はまだ何処に何があるのか分からない。
足音の調子からして女子だろう。
軽やかに階段を降りてくる。
急いでいるのだろうか。
走り降りていた。
しかし圭は気にせずに職員室までの道のりを聞こうと階段を見上げる。
黒髪の艶やかな少女だった。
細い黒のフレームの眼鏡。
今時では珍しい、膝丈のスカート。
気の強そうな少しつり上がった目。
それでも愛らしく感じるのは両手を軽く挙げて、
内股に危なっかしく階段を駆け降りて来るその様子からだろう。
落ちる。圭が思ったその瞬間だった。
「あっ」
少女は階段を踏み外し、体はこちらにかしいでくる。
反射的に圭は手を伸ばした。
その少女を浮けとめたかった。
身体自体は浮けとめたものの、
勢いが殺しきれず少女の身体を抱きとめたそのまま尻餅をつく。
「痛ぁ……」
圭は小さく呟いた。しかし少女の事を思い出し腕の中を確認する。
少女は圭の腕の中にすっぽりと収まっていた。
まるでそこが、初めから少女の居場所だったかのようにきちんと収まっている。
小さな少女だ。圭は思った。
「だいじょーぶ?」
西の訛りの強い言葉で訪ねると、少女は驚いたように顔をはねあげた。