ダルいズム。
□青い空の上に
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絵梨花は目を伏せる。
そして遠くから聞こえる音に耳を澄ませた。
「音がする」
「え?」
「足音だ。こっちへくる」
理央が困惑している様子は手にとるように分かる。
足音が教室の前でとまった。
「理央」
低い声。
目をやるとそこにいたのは黒い少年。
「早く来い」
セルフレームの眼鏡をあげて続ける。
「隼人、私には手が負えん。任せたぞ」
いつもの通りに無表情で告げると、隼人は軽く目をそらした。
理央はふいと顔を背けると鞄を持って絵梨花に続く。
「任せるって何よ。待ちなさいってば!!」
高い声が聞こえた。
絵梨花は待つことなく足を進める。
しかしふと思い立って振り向くと理央は驚いた顔をしていた。
絵梨花が振り向くとは思っていなかったのだろう。
「お前が有重なら、隼人はお前を見付けなかっただろう」
無感情な目。笑うことのない口元。
だからとは言え、絵梨花自身に感情がないわけではない。
「どういう意味よ!」
理央の声を背中に聞きながら絵梨花は窓の外をみた。
曇り空からちらりほらりと青がのぞいている。
明日は晴れればいい。
天気も、あの少女の悩みも。