ダルいズム。
□生き人形に口付けを。
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有重はもう一度、ここ、好きだね、と言った。
小鳥も同じように
「一番そらに近いもの」
と答えた。
しかし有重は首をふる。
「一番地面から遠いからじゃないの?」
「おんなじよ、どっちだって」
小鳥が再び屋上からの地面を眺めると、有重も同じように地面をのぞきこんだ。
地面から風がびゅうびゅうと吹き付ける。
小鳥の長い髪はまるで蛇のように暴れる。
有重の羽織ったパーカーのフードは狂ったようにばたばたと音を立てる。
「一番地面から遠いからじゃないの?」
有重が呟いた。
小鳥は地球に向かって手を伸ばす。
誰かを助けるように。
或いは、助けを求めるように。
「とおいわ」
小さく言葉をはきだすと、伸ばしたてのひらをきゅっと握る。
そうして、至極残念そうに首をふるのだ。
まるで見えない誰かを助けることが出来なかったというように。
小鳥は屋上が好きだった。
暇さえあれば屋上にいる。
出来ることなら放課後の間中ずっとここにいたい。
でもそれは叶わないから、せめて少しでも長くいれるように屋上の鍵を開けた有重のいる演劇部に入ったのだ。
「やっぱり、とおすぎるわ」
小鳥はまた呟いた。
髪はまるで蛇のように暴れている。