ダルいズム。
□生き人形に口付けを。
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彼女は死ぬことを切望している。
この世に絶望した訳ではあるまい。
自分に失望した訳ではあるまい。
しかし彼女はただただ死を熱望し続けているのだ。
「このせかいに産まれ出たことが、そもそものまちがいなのね」
痛みでしか痛みを補完する事の出来ない憐れな小鳥。
精神よりくるいたみは、肉体にあたうるいたみによって鎮痛剤とする。
「まるで身体にくさびを打ち付けられて、それのいたみを忘れようとあがくの。
でもそれはあらたないまみをよんで、ふるいいたみは忘れるけれど、やっぱりそれは堂々めぐり」
小鳥は演劇部員らしく、深々と溜め息をついた。
「でも私はそれをしないと今にも気をうしなってしまいそうなの。
こぼす涙もかれてしまったわ。
あるのはいまだに鮮血をふきだしつづける傷口だけよ」
有重は瞼を大義そうに持ち上げると、白い手で小鳥の細い首を包みこんだ。
「だから?だから僕に殺してほしいって?」
軽く力を入れれば簡単に折れてしまいそうな細い首。
まるで人形のよう。
「しぬときは、なるべくくるしんでしにたいわ。
肉体のくるしみで、精神のくるしみを忘れたいから」