ダルいズム。

□生き人形に口付けを。
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 少しだけ。
ほんの少しだけ力を入れてみた。
小鳥は特別美味しい料理を味わうかのように瞼を伏せて息のつまる様子を味わっている。
苦しみですら、彼女にとっては甘露なのだ。
有重は唇をかんだ。

「……僕は、そこまで壊れてないよ」

 首からするりと指が外れると、小鳥はいたく傷付いた瞳を有重に向ける。

「どうして死にたいと言うの」
「このせかいに、私はひつようないからよ」

 小鳥はきっぱりと答えた。
答えて、さらに続けた。

「貴方はたくさんのひとから求められているわね。
結構じゃあないの。
貴方に私のかなしみなんてわかりはしないんだわ」
「当たり前だろう」

 苛立たしげに言うと、彼女は楽しそうに笑う。

「ほぅら、そのとおりよ。わかるわけないわ。
私だって貴方のくるしみのひとかけらさえわからないんだもの」

 小鳥は棄てられた人形のように髪はぼさぼさで、目は対照的に輝いていた。

「いたっていなくたってかわりのないにんげんなら、
吐くほどくるしみを味わわなくっていいじゃない。
おんなはね、肉体のいたみにはつよいのよ。
こどもをうむしゅぞくだから」

 だからねえほら。ころしてよ。
じれったくなったのか小鳥は自ら有重の手を首に据えつけた。
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