ダルいズム。

□生き人形に口付けを。
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 女は子供を産む種族だ。
それに間違いはない。
男はその神秘なる女に従属し、義務を果たさねばならない。
だからとは言え、彼女の要求を飲むわけにはいかないのだろう。
何故なら彼女は女である。
子供を産む種族だ。
彼女がこれから産み出すべき子供達は、まだ存在していないのだ。

「女は精神の痛みにも強いよ。
男よりもずっとね」

 手を外そうとすると小鳥は嫌々とその上からきゅっと力を込める。
有重がそれを諦めると瞼を伏せたまま、安楽の溜め息をつく。

「ねえ、だから申し訳ないのだけれど、
君にはもう少し精神の痛みに耐えてほしいんだ」

 僕は男だから。
君を殺すのは簡単だけれども、
恐らくその後になって苦しむ精神の痛みには耐えられそうもないから。
 小鳥は大きく目をあいて、じっと有重を見つめた。
うるんだ瞳。
みだれた髪。
人形のように愛らしい、その姿。
 有重は首から手を離すと、髪にそっとその手を差し入れた。
においのしない少女。
生きているのか死んでいるのか。その境目に存在する少女ににおいはなかった。
 有重の赤い目が、小鳥の黒い目をとらえる。
そうして、そっと口付けた。
 口付けで、白雪姫は生き返るけれど。
死を渇望する人形は生きる望みを持とうとしない。

 そうだ。彼女の名前は
翼のない、憐れな小鳥。
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