ダルいズム。
□梅雨と憂鬱
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学校につくと傘についた雨粒をはらう春太をしり目に有重はさっさと教室に向かおうとする。
「お前それ酷くない?」
「そうかなぁ」
溜め息をつくと有重はまた笑った。よく笑う人間だ。
結局有重は春太を待っていた。
急かしながらではあったけれど。
「のばら来てると思う?」
「さあ。来てるんじゃない」
春太の問いにいい加減に答えながら有重は春太の斜め前の席に座る。
のばらが先頭の列だった。
のばらは赤い髪をしている。
それだけでも十分に目立つと言うのにさらに彼女は腰ほどまでもある長い髪をしている。
それを上の方で一つにまとめ、さらりと背中に流しているのだ。
彼女を見付けるのは容易い。
彼女は机に突っ伏していた。
「のばら、おはよう」
すぐに返事はなく、しばしあってからゆっくりと春太を見上げる。
「なんや、はるか‥‥」
「何だとは失礼な」
しかし特に返事もなくのばらは再び机に突っ伏した。
さすがに体調が優れないらしいと気が付くと、机の前に膝をつきのばらの様子をうかがう。
「大丈夫か?」
のばらは突っ伏したままに答える。
「大丈夫、ただの寝不足やから」
「寝不足?」
一日くらいの寝不足ではここまでにはなるまい。朝に弱いか、一睡もしていないかのどちらかだ。
「昨日、何時に寝た?」
つい先程自分が問われた問いをそのまま赤い髪の少女に問う。
少女は少し悩んでから、さも言葉を発する事すら面倒であると言いたげに顔だけを起こした。