ダルいズム。

□青い春2
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「ご飯いらんの?」
「暇ないって!」

 パンなどろくに食べない癖にこういう時の為と言わんばかりに春太の口にトーストを押し込む。
そしてペットボトルの茶と弁当を手渡した。

「角で可愛い転校生とぶつかったりしてなあ」
「ティア、それじゃ昔の漫画だろ?」
「いってきます!」

 微笑ましい両親を振り切って家を飛び出る。
学校までの道のりは15分。
タイムリミットは10分だ。
 近道を使えば走らずに済むかも知れないと本来ならば使わなくてもいい角を曲がる。

「あ」

 赤く長い髪。
黒く潤んだ大きな瞳。
短いスカートから伸びる足はしなやかで、一瞬その美しさに息をのむ。

「痛ぇっ!」

 母の予言通り角で可愛い女の子とぶつかってしまった。
トーストは道の真ん中に放り出されている。
半ば押し倒すかの様に転がってしまい、慌ててその身体から飛び退いた。

「ごめん、大丈夫?」

 ふと、目が行くのはスカートからちらちらとのぞく白いものだった。
いや、これでは本当に漫画になってしまう。
しかもとてつもなく昔の漫画だ。
 手を差し出すが女の子はそれを無視して立ち上がった。
 見た事のない制服で、間違いなく春太の通う学校のものではないと即座に知れた。
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