ダルいズム。
□青い春4
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手が届きそうだった。
しかし、その瞬間にその腕は春太の手からするりと抜けていく。
「はる」
のばらが言った。
「だいじょうぶやから。さき帰り」
無表情なのか、笑っているのか。
春太にはうかがい知る事は出来なかった。
何故ならその一瞬の後にはのばらはもう前を向いていて春太の方を振り返る事はなかったからだ。
「……」
呆然と。
ただ呆然と、立ち尽くすしかなかった。
女子の争いごとに男子が介入できない事は知っている。
けれど、それならば、自分はどうすればいいのだろう。
「あ、春太」
跳ねる様に後ろを振り向くと、袴姿の、有重にそっくりの女子と髪の長い女子が立っていた。
有重の妹、理央と友人絵梨花である。
「理央、絵梨花!助けて!」
「は?」
表情の変化に乏しい二人だったが、
それでも理解できないという感情を春太に伝えるには十分だった。