ダルいズム。

□I love you.
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 幸せだ。
この上なく幸せだ。
愛しい人がいて、自分がいる。
そうして二人はゆるゆると生活を送っている。

「萌」

 宏は言った。
萌はなあにと答える。

「愛してる」

 そんな言葉、今まで口にしたこともなかった。
考えたこともなかった。

「愛してる」

 もう一度口に出す。
言葉の感触を確かめるように。
 萌は困った顔をしてうつ向いてしまった。
耳まで真っ赤にしている。
普段、そのようなことを口に出す人間ではないから萌も驚いているのだろう。

「今日は、早く帰るから」

 口に出すことも、必要なのだ。
たまにはそんな関係もいい。

「一緒にいよう」

 二人でいよう。
どんな時でも。
 愛してるから。

「なあに急に。
後ろめたいことでもあるの?」
「……」

 その問いには答えずに窓の外を見る。
快晴だった。
 さて、今日はどんな一日になるだろうか。
宏は少しだけ微笑んだ。
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