ダルいズム。

□(milk)
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「きゃあああっ!!」

 冷蔵庫の中に入っていたのは、解剖途中のカエルだった。
腹を開かれてそれでも生きている。
 佐々岩は慌ててドアを閉め、へたり込んだ和子の様子をうかがう。

「ごめ、忘れてた」
「な、あれ……」

 授業で解剖する時は心構えがある。
しかし今のは不意打ちも甚だしい。
震える和子の体を抱きしめながら、佐々岩は申し訳なさそうに笑う。

「授業で使おうと思って」
「なんで牛乳と一緒の場所に入れるのよ、バカ!!」

 驚きからか恐怖からか、和子の目からぽろぱろと涙が流れ落ちた。
佐々岩はその様子をじっと見つめていたが、やがてしっかりと体を抱きしめた。

「ごめんな」
「もう、知らないんだから!」

 ごめんごめんと何度謝っても、和子はまだ泣いていた。
子供をあやすように頭を撫でてやる。

「和子」

 佐々岩は少しだけ体を離すと、顔をのぞきこむように身を小さくした。
大分落ち着いたらしい和子のすすり泣きが聞こえる。

「顔あげて」

 ふるふると頭をふる和子の頬に、佐々岩はすっと口付けた。
跳ねるように顔を上げる。
佐々岩のにんまり顔。
和子は声を失ってその顔を凝視する。

「ほら立って。すぐ
出来るから」

 佐々岩は立ち上がると和子に手を伸ばした。
恐る恐る手を取るとしっかりと握り返される。
立ち上がると、少し足元がふらついた。
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